翻訳の品質については、これまでのところ、翻訳サービスを提供するための工程に関する品質だけが、さまざまな基準によって標準化されてきた。その基準の中では、EN 15038が(特に翻訳業界向けに作成された品質標準として)おそらく一番知られている。この基本的な考え方として、翻訳の提供者と被提供者の両者が、翻訳を提供する工程(プロセス)と、その結果(翻訳物)に満足をすれば、もちろんその翻訳工程の品質は「良い」とされる。その前提となっているのは、翻訳者が手順に厳密に従うならば、品質が伴わないリスクが軽減するとの根強い考え方だ。また翻訳の発注者もこの工程の一部として、必要とされる文書、協力、資料(用語集の形式で提供する)、検証、確認、ガイドライン、作業指示書、そして仕様書などを過不足なく提供することが期待される。
参考文献
Gouadec, Daniel
2007 Translation as a profession. Benjamins Translation Library 73. Amsterdam & Philadelphia: John Benjamins BoP
House, Juliane